「家は建てるより建売を買うほうがいい。」
「これから数え切れないほど頭痛が起きるよ。」
家を建てる前にどれだけの人からこの言葉を聞いたことか。

ハワイの家はいたって簡単。
まるでお菓子の家の壁をビスケットで貼り付けていくのと同じ。
窓をはめ込んだ壁を立てていくのです。

3ヶ月も掛からないはずでした。
しかし、マウイ郡の役所の検査を計算に入れていませんでした。
土台、枠組み、電気配線、水道配管、など全てにおいて
検査をパスしなければ次へと進めません。
その上、検査願いの電話をしてもすぐに来てくれるとは限らず
2週間も何も手がつけられないままの時もありました。

私は家の建築が一向に進まないあせりと毎日キヘイから
往復2時間以上の道のりをかけての畑仕事で疲れきっていました。

子供たちは学年の途中からの転校を避けるためクラの小学校へ
通わせていました。
学校が終わると私が農作業を終える日暮れまで
簡易テントの中で宿題をしたり犬と戯れ、畑を庭のようにして遊びました。
子供たちも犬も帰りの車の中では疲れきって聞こえるのは寝息のみ。
家がクラにあればこんな暮らしをしなくてよいのに。
この周辺に仮の引越しを考えたこともありました。
でもあのスケールの所帯で何回も引越しをする気にはなれません。
なんとか1日でも早くクラに住みたい、と夫に懇願しました。

夫が出したアイデアはすでに完成している1階部分で生活すること。
一階は車2台分のオープンなガレージ、その奥に野菜を保存しておく
冷蔵室になる部屋、そのまた奥に収穫後の農作業をする部屋がありました。
ガレージに家具や所帯道具などの引越し荷物を置き
奥の部屋で寝泊りをするという案でした。
雨露しのげばという言葉のような生活に当分なるのかと想像すると決心がつきません。
文明の利器に慣れすぎた生活から原始的な生活はできるのだろうか、と。
けれど私以上に子供たちがそれを望みました。
「なんとか生きていける。」と言う夫の言葉も重なり
大雨の降る大晦日に私たち4人はレンタルしたトラックで
キヘイを後にしました。